人気ブログランキング | 話題のタグを見る

ハンブルク・バレエ『真夏の夜の夢』 2016年3月13日

ジョン・ノイマイヤー率いるハンブルク・バレエのツアー。日本初公開の「リリオム」、ノイマイヤーの初期の名作「真夏の夜の夢」、あとはガラ公演。最初は新作だし、大好きなコジョカルが客演する「リリオム」のチケットを買おうと思ってたんだけど、シェイクスピア通のタケさんから、

「ぜったい"A midsummer night's dream"がオススメ!通常版を知ってる人には衝撃的だと思う。なのに、シェイクスピアが表現したかった世界がどの版よりも忠実に再現されてるのは、ノイマイヤー版だよ!」

との熱いアドバイス。
世界中で舞台を見ているタケさんがこれだけ言うなら絶対間違いないと思って、「真夏の夜の夢」にしました。
http://www.nbs.or.jp/stages/2016/hamburg/midsummer.html

実は昔ロンドンで英国ロイヤルバレエのアシュトン版のチケットを買ったものの、当時、友人たちで参加していたアートフェアの準備で行けなくて、チケットを会社の友人に譲ってしまったので、いわゆる通常版?も観たことがないんだけど。。。(でも確かこのアシュトン版の「真夏の夜の夢」の公演のとき、ポルーニンのロイヤル退団騒動が勃発したんだった…。)

------------------

ホールは東京文化会館。このホール大好き。
上野駅から見える大きく張り出した庇や、渋いコンクリートの色合い、エントランスからホールまで無駄が無い導線でありながら豊かな体験ができる空間、ホール内部の躍動感ある装飾…、さすが巨匠・前川國男のデザイン。駅を降りてから席に座るまでの道のりで豊かな気持ちになれるホール、貴重だよね。。

-------------

ヒッポリタ/タイターニア:エレーヌ・ブシェ
ヘレナ:シルヴィア・アッツォーニ
ハーミア:フロレンシア・チネラート
デミトリアス(士官):アレクサンドル・リアブコ
ライサンダー(庭師):エドウィン・レヴァツォフ
シーシアス(アテネの大公)/オベロン:ウラジーミル・ヤロシェンコ(ゲスト・ダンサー)
パック:アレクサンドル・トルーシュ

-------------

「真夏の夜の夢」には、高貴な貴族たちの世界、召使や職人たちの庶民の世界、森の妖精たちの神秘な世界の3つの異なる世界が存在しています。貴族たちと庶民の世界はもちろん同じ人間の世界なんだけど、妖精たちの世界は時空が異なっていて、でもその時空が微妙にゆがんでオーバーラップする瞬間があり、そこに若き日のノイマイヤーの情熱と知恵が凝縮されているように思います。

3つの世界は音楽や衣装、ダンスのスタイルまで異なっていて、貴族の世界は、クラシック音楽に、中世風な衣装、クラシックなスタイルのバレエで進んでいきます。
庶民の世界は、オルガンやアコーディオン、太鼓などでカーニバルのようにかしましく賑やかに奏でられ、衣装も中世の質素な服装、ダンスというよりもコメディ調のドタバタ劇が繰り広げられます。
妖精たちの世界は一変、スモークがかかったかと思うとガラリと現代音楽に変わり、妖精たちはシルバーのツヤツヤなレオタードに身を包み、何やら感情があるのかないのかもよく分からない無機質なコンテンポラリー・ダンスを見せます。まるでロボットか宇宙人みたいな…。

ときおり人間の世界と妖精の世界は時空のゆがみでお互いが垣間見えたりして、そんなときはカーニバル音楽がゆがんで聞こえてきて、スモークの向こう側にスローモーションになった職人たちの動きが見えたりします。

物語では、時空のゆがみを乗り越えて妖精の世界に迷い込んでしまう人間たち。ヘレナ、ハーミア、デミトリアス、ライサンダーの4人。
四角関係に陥っている彼らの関係に一役買おうと、余計なことをするイタズラ者の妖精パック。
ただ、パックには全てが見えるのに、人間たちには妖精の姿が見えないよう。。。パックが盛んに人間にいたずらを仕掛けるも、みんなパックに気付かない。パックのいたずらせいで一層こんがらがる人間関係。

一方、パックは妖精の女王タイターニアにもイタズラしちゃう。
女王のまぶたに惚れ薬を塗り、それゆえに、目覚めた女王は、これまた妖精の世界に迷い込んでロバの頭をかぶらされてしまった職人ボトムに一目惚れ。ロバ相手に本当にヤッてしまう、というオドロキの展開!
猛烈にロバ頭の職人ボトムに襲い掛かってて、欲望のままに動いて快感を貪る姿が、スゴかった…。
普通にコンテンポラリー・ダンスとしても面白い表現というか。。。こういうちょっと卑猥な表現も、シェイクスピアに忠実といえば忠実かもしれませんね。

------------------

ダンサーはこの日、オベロン役に代役でポーランド国立バレエ団のウラジーミル・ヤロシェンコが出演。
この物語の最後は、妖精の王様オベロンが魔法で全てを解決するんだけど、「代役か~~」と思いつつ観たヤロシェンコが一番印象に残ってたりします。
大きくてたくましいオベロン。シルバーのレオタードも周囲の妖精より、よりツヤツヤで、威厳たっぷり。頼もしい踊りでセクシーでした。意外だったなー。周りでちょこまか動いてるパックと比べて観るからかな?
パックも良かったです。かわいらしくて憎めないキャラクター。インタビュー記事見るとヒゲ面のお兄さんなのに、舞台ではかわいかったなー。

結果として、ノイマイヤー版「真夏の夜の夢」見て良かったーー。人生で絶対に観ておきたい。観ようかな~って迷ってる人がいたら絶対オススメしちゃうなぁ。ノイマイヤー35歳のときの作品ということで、若いからこその衝撃的なチャレンジがそこかしこにあって、創意工夫溢れる名作だと思いました。

 
by tsutsumi_t | 2016-04-16 21:25 | ダンス


バレエ、ダンス全般、建築についてのブログ。


by Tsutsumi

カテゴリ

全体
ダンス
ダンス(日本)
演劇
オペラ
ミュージカル
歌舞伎
ストリート
読書
子育て
わたしのこと
未分類

最新の記事

山上憶良をすこしよむ
at 2017-07-26 21:56
百人一首が頭を行き交う
at 2017-07-12 20:59
0か月~2か月の頃はなんだか..
at 2017-07-04 00:01
ショパン
at 2017-04-17 20:50
お裁縫にハマる
at 2016-12-14 16:21

以前の記事

2017年 07月
2017年 04月
2016年 12月
2016年 11月
2016年 10月
2016年 07月
2016年 04月
2016年 02月
2016年 01月
2015年 05月
2015年 04月
2015年 02月
2014年 11月
2014年 09月
2014年 07月
2014年 02月
2013年 12月
2013年 10月
2013年 09月
2013年 08月
2013年 07月
2013年 06月
2013年 05月
2013年 03月
2013年 02月
2013年 01月
2012年 12月
2012年 11月
2012年 10月
2012年 09月
2012年 08月
2012年 07月
2012年 06月
2012年 05月
2012年 04月
2012年 03月
2012年 02月
2012年 01月
2011年 12月
2011年 11月
2011年 10月
2011年 09月

最新のトラックバック

プロフィール

Tsutsumi

Mechanical engineer / Architect

建築学科を卒業、日本の建築設計事務所で働いた後、2011年に渡英。
バレエやダンス全般の観劇についてここに記しています。

(追記)2013年4月に日本に帰国しました。

(追記)2016年12月に出産しました。観劇はなかなか難しく、ブログの内容が子育てにシフトしてきています。

検索

タグ

その他のジャンル

記事ランキング

ブログジャンル

子育て
日々の出来事

ブログパーツ