『UNDANCE』 Turnage/McGregor/Wallinger 2011年12月3日

サドラーズウェルズ劇場で『UNDANCE』をみる。
ロイヤルの『LIMEN』以来、ワイン・マクレガーの振付が気になっていたので、非常に楽しみにしていた。今回は彼自身のカンパニーによる上演。


まずは、『TWICE THROUGH THE HEART』。
舞台にかけられた紗幕、机、椅子、そしてオペラ歌手。シンプルな舞台を観客は3Dメガネをかけ、紗幕に現れる映像を観る。
主婦と思われる女性が錯乱したようにうろうろ舞台を歩き、苦しい様子で歌う。紗幕に現れる映像は、ベッドに腰掛ける男性、シンク、排水管、乱れたベッド、風呂場・・・。繰り返し、煙のように現れ、また煙の糸のようになってほどけて消えていく。主婦の行き詰った心理状態が伝わる。
プロットとしては、DVを受け続けた揚句、夫を刺殺した主婦を表しているらしい。

『LIMEN』でもマクレガーは紗幕にデジタル数字を浮遊させ、空間の歪むような面白い感覚を作り出していた。しかし、今回は歌手であり、彼女は動き回らないため、見ている方はその歪みを、3Dの映像そのものとしてしか楽しめず、それ以上、視覚的に面白いことは起こらない。つまり、3Dの映像は煙のように不確かで面白かったけれど、どう考えても、歌手との組み合わせはいただけない。


次に『UNDANCE』。
舞台の背景にグリッド、舞台の左右に”UN”の文字。
舞台には11人のダンサー。彼らは踊り、そして彼らが踊る映像が少しずれて背景のグリッドに映し出される。

この作品には2つの参照事項があるそうだ。
彫刻家リチャード・セラが残した動詞のリスト。そして、高速度の連続写真撮影を成功させてエドワード・マイブリッジの写真。

リチャード・セラの動詞のリストが導き出す疑問は、「動詞は名詞を作り出すことができる」→「動いているもの(動詞)を静止したもの(名詞)にできる」→「しかし、我々は一度起こしてしまった動きをUNDO(取り消す)ことはできるか?」
"UN-"という言葉は、実現可能なことなのだろうか?

エドワード・マイブリッジは馬の動きを連続写真におさめ、馬が曲げた4本の足を同時に地面から話している瞬間があることを証明している。例えばアルベルティが3次元空間を2次元の絵画として描くためにグリッドを用いたように、マイブリッジは時間にグリッドをくっつけ、馬の動きを静止した形態に切り取った。
動き続ける我々は、過去の動きを切り取り再現できるんだろうか?


答えは否。
背景に映し出されるダンサーの動きと、舞台上でライブで動いているダンサーには大小のずれがある。背景の映像は後ろ姿で、ライブのダンサーと同じ動きをしているのだが、背景の方がタイミングが早かったり遅かったり、また動きの幅も多少異なる。
我々は同じ動きをやり直すことはできず、つまりは新たに動きを生み出し続けるしかないのである。


今回の振付自体は、McGregor-ish(っぽさ)とでもいいたい感じのものだった。
このネバネバっこさ。
本来、男性ダンサーが女性ダンサーをリフトすれば、フワリと浮くように見せるものだが、彼の振付は違う。女性ダンサーの上半身は移動するが、脚はいまだ元の位置を離れず、ズズズと引きずられるように遅れて移動してくる。また例えば、手と足は前進しても、お尻は重心を離れず、ぶかっこうにお尻を突き出す。ダンサーの背中は期待以上に弓なりにしなり、肩や腕は普段曲がらない方向を向く。
ダンサーに感情表現はなく、やはり宇宙人的な、ネバネバしながらも無機質な印象。
そしてわざとなのか、決して緩急付けることなく、ずるずると続いていく。
でも決して嫌いではない。
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by tsutsumi_t | 2011-12-05 02:55 | ダンス


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プロフィール

Tsutsumi

Mechanical engineer / Architect

建築学科を卒業、日本の建築設計事務所で働いた後、2011年に渡英。
バレエやダンス全般の観劇についてここに記しています。

(追記)2013年4月に日本に帰国しました。

(追記)2016年12月に出産しました。観劇はなかなか難しく、ブログの内容が子育てにシフトしてきています。

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