英国ロイヤルバレエ『The Nutcracker(くるみ割り人形)』 2011年12月18日

高田茜さんが金平糖でデビューする『くるみ割り人形』。
彼女がオーロラ姫と金平糖にキャストされていることをネット上の情報で知ったときには、「え?入団してまだ2年の超若手なのに??」と驚き、にわかに信じられなかった。高田茜さんのデビューに加え、家族連れが殺到するであろうクリスマス前のマチネということもあって、いざチケットを予約しようとしたときには、時期は早かったにも関わらず、ほとんど席は売れており、(私が買える価格帯のリーズナブルな席は)立ち見席しか空いてなかった。


The Sugar Plum Fairy(金平糖の精): Akane Takada(高田茜)
The Prince(王子): Dawid Trzensimiech
HERR DROSSELMEYER(ドロッセルマイヤー): Alastair Marriott
Clara(クララ): Meaghan Grace Hinkis
Hans-Peter / The Nutcracker(ハンス=ピーター兼くるみ割り人形): Ludovic Ondiviela


とても堂々として優雅な金平糖だった。
高田茜さんの踊りは初めて見たけれども、針みたいな鋭さ、を感じた。

脚がいったん高く上がると、スッと決まった位置で止まって、決して揺れることがない。この高さに脚を上げるにはそのくらいの力が必要で、というのを計算してあり、つま先がピンと伸びているだけでなくて、どういう角度に足首をひねれば脚がキレイに見えるのか、まで研究しつくされているようだった。決してブレない、細くピンと張り詰めた脚。針のように鋭い緊張感。
それでいて、彼女の肩や腕、指先は絶え間なく柔らかに動いて、笑顔を絶やさず、優雅だった。

グラン・パ・ド・ドゥのアダージオが終わった時点で、眺めていたくるみ割り人形役のLudovic Ondivielaとドロッセルマイヤー役のAlastair Marriottが顔を見合わせて何か会話しているのが見えた。キャスト全員が彼女を盛りたてているのが分かって微笑ましい。

もちろん、帰り道の観客の反応の中には、「まだまだじゃない?」と言っている会話もあったりした。確かに、妙なぎこちなさ(例えば、踊っていないとき、王子のDawid Trzensimiechと顔を見合わせようとして、タイミングが合わない・・・とか、王子が来るのを待っているようで、待ちきれなさそうな感じ・・・とか)があったりするけれども、時が解決してくれそうだし。それにずいぶん長いこと、王子役はTBC(To be confirmed)になっていたせいもあるのではなかろうか。ずっと相性を見ていたのかな?
また、私のパートナーは「何か…フワリとした軽さが無い感じがするかも?」と言っていた。花のワルツに出てきたエマ・マグワイアがそれこそ軽やかだったので、それと比較すると、体重を後ろに残したような重さがあるのかもしれない。

でもきっと、これからどんどん解決されてしまうんだろうな!


ところで、最初に英国ロイヤルバレエの『くるみ割り人形』を見て驚いたのは、「ドロッセルマイヤーおじさんは鼠捕り機を発明したがゆえに、鼠の王様の呪いによって甥のハンス=ピーターをくるみ割り人形に変えられてしまった」という設定があること。
冒頭、ドロッセルマイヤーの工房で、彼が苦渋の表情で考え込むと、背後のハンス=ピーターの肖像画がくるみ割り人形が苦しむ姿に一瞬変わる、というシーンがある。プロットを知らずに見たときは、このシーンが全く分からなかった。

ドロッセルマイヤーはクララが彼の甥ハンス=ピーターにかけられた呪いを解いてくれると信じ、彼女にくるみ割り人形を託す。クララの勇気により、呪いは解け、お菓子の国から戻ってきたハンス=ピーターは無事、ドロッセルマイヤーの工房に辿り着き、ドロッセルマイヤーと再会を喜ぶ。

日本で見る場合、ほとんどこの設定は使われていないのではないだろうか?
私も最初はこの設定が英国ロイヤルバレエのオリジナルかと思っていたけれど、鼠取り機うんぬんの設定は初演時の設定に忠実らしい。

よく考えればこの設定は、この物語が成り立つようにしている。
「くるみ割り人形はなぜ王子様に戻るのか?」
「というか、そもそも、なぜ王子様はくるみ割り人形になってたのか?」
という疑問に明快な答えを与えてくれる。
そして、多くのその他の『くるみ割り人形』が”クララの夢オチ”ということになっているけれど、この設定がくっつくと、夢オチではなくなるのだ。
クララは実際にくるみ割り人形を助け、お菓子の国へ旅したのである。
原作ほど複雑でもなく、クララも現実世界に戻ってきて、理路整然と納得がいき、後味のよいプロットになっているわけである。
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by tsutsumi_t | 2011-12-20 05:47 | ダンス


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Tsutsumi

Mechanical engineer / Architect

建築学科を卒業、日本の建築設計事務所で働いた後、2011年に渡英。
バレエやダンス全般の観劇についてここに記しています。

(追記)2013年4月に日本に帰国しました。

(追記)2016年12月に出産しました。観劇はなかなか難しく、ブログの内容が子育てにシフトしてきています。

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