英国ロイヤルバレエ『ROMEO AND JULIET』 2012年3月7日

アリーナ・コジョカルとヨハン・コボーが主演する『ロミオとジュリエット』。この演目はサラ・ラム&フェデリコ・ボネリの回に一度見たのだけど、どうしてもコジョカルの回を見たかったので、当日、仕事が終わった後、ボックス・オフィスで当日券を買った。

ボックス・オフィスでまだ買える券があるかどうか聞くと、立ち見席が一枚だけ残っている、とのこと。壁にズラリと並ぶ、リターン・チケット(買った人がキャンセルして戻ってきたチケット)を待つ人々の行列が見えたので、ついでにおじさんにリターン・チケットがどのくらいあって、どんな席が空いてるのか聞くと、「私も知りません。」と。
「え?じゃあ、並んでる人たちは買えるかどうか分からないけど並んでるの?」
「そうですよ。あの中の何人かは見れずに帰らないといけないかもね。」
絶対に見れる立ち見席と、もしかしたら見れないかもしれないけど良い席があるかもしれないリターン・チケットを天秤にかけ、立ち見席10ポンドを選ぶ。


JULIET/ジュリエット: Alina Cojocaru/アリーナ・コジョカル
ROMEO/ロミオ: Johan Kobborg/ヨハン・コボー
MERCUTIO/マキューシオ: Ricardo Cervera
TYBALT/ティボルト: Bennet Gartside
BEVOLIO/ベンヴォーリオ: Kenta Kura/蔵健太


コボーがロイヤル・オペラ・ハウスで踊る機会は相当少ない。
彼の公式ウェブサイトのカレンダーを見ると、日本でのコジョカルの座長公演において彼の作品が幾つか踊られていたり、今シーズンのロイヤルバレエの演目『ラ・シルフィード』がコボーによる改訂版だったり、ロイヤル・ニュージーランド・バレエの11月の演目『ジゼル』を、ステーフェルと共に改訂していたり、と、コボーの活動はだいぶ振付や舞台演出に移行してきているように思える。

コジョカルとコボーがプライベートでもパートナーということを知っているせいなのか、見ていて気分的に入り込める。そして、なぜかこのキャストでこの演目を見ないと、どうしても感動が薄れてしまうのではないかと、怖れている。それは同時に、もし、年長のコボーが引退したら、コジョカルは別のパートナーと組んで同じ感動を届けられるのか、という疑問でもある。


さて、今回の舞台、その年長のコボーだが不思議と若く見えた。彼のロミオは軽薄な青年といった趣きだった。コボーが踊る役はいつも軽薄そうだったり、キザに見える。ちなみに、この軽薄さというのは二枚目に通じていると思う。

コボーを見ていると、彼は常に舞台上で観客の視線を集めている。彼は自分が中心で踊っていることを知っているし、むしろ、舞台の中心として踊ることしかできないんじゃないだろうか。プリンシパルとして長年活動していれば、クラシックで主役以外の役を踊ることはほとんど無いだろう。意識しなくても、コボーはきっと華やかさをまきちらしながら踊っているだろう。
逆に、ずっとプリンシパルになれなければ。プリンシパルの位についているダンサーの多くは、短期間で階級を駆け上るか、既にプリンシパルとして移籍してきた人が多い。逆に、脇役を踊っている人々は、クラシックではほぼ脇役しか踊っていないのだ。脇役として控えめな光を出すことに、いつしか慣れてしまうのではないだろうか。
そう、クラシックは、中心としての主役と周辺としての脇役があまりにくっきりと分かれている。

しかし、コンテンポラリー・ダンス。例えば、ロイヤルでもよく踊られるウェイン・マクレガーの振付作品では、中心といえるべき存在はいない。常に舞台上にダンサーが散らばり、あちこちで1対1で向き合っている。プリンシパル、という中心を踊ることに慣れた人たちが、こうした中心を規定しないダンスにうまく対応できているんだろうか?


話が飛んでしまったのは、立ち見席はやはり10ポンドの価値だったということで、舞台の床が半分見えないので、舞台上で起こっていることも半分は見えなかったのである。とほほ。

終演後、拍手が飛び交う中、コジョカルとコボーが何度もキスしているので、客席からも「ヒュ~」という声が上がる。それに照れて、コジョカルはコボーを手を引っ張って、幕にササッと入って行ったのが、なんともかわいかった。いつまでもコジョカルはジュリエットそのままに見えるようだ。
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by tsutsumi_t | 2012-03-15 07:53 | ダンス


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プロフィール

Tsutsumi

Mechanical engineer / Architect

建築学科を卒業、日本の建築設計事務所で働いた後、2011年に渡英。
バレエやダンス全般の観劇についてここに記しています。

(追記)2013年4月に日本に帰国しました。

(追記)2016年12月に出産しました。観劇はなかなか難しく、ブログの内容が子育てにシフトしてきています。

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