Cinema: 『La fille mal gardée』 2012年5月16日

ロイヤル・オペラ・ハウスが公演を世界各国の映画館へ同時中継するRoyal Opera House Cinema
普段、劇場では安い席で見ているので、毎回「見えないっ」というフラストレーションとの戦いなのだけど、映画館で見るとやはり顔の表情や細かい演技がしっかり見えるのがいいところ。

今回は『La fille mal gardée(リーズの結婚)』。Curzon Mayfairにて。ここの映画館は古いけれども名画座のような雰囲気が素敵。高級エリアだけに、観客には品のよい老婦人が多かった。


WIDOW SIMONE(シモーヌ): Philip Mosley(フィリップ・モーズリー)
LISE(リーズ): Roberta Marquez(ロベルタ・マルケス)
COLAS(コーラス): Steven McRae(スティーブン・マックレー)
ALAIN(アラン): Ludovic Ondiviela(ルドヴィク・オンディヴィエラ)


スティーブン・マックレーがすごかった。ジャンプしても着地がきちんと五番のポジションに降りてきて、ふらつくこともない。アラベスクにあげた足は高くキープされ、フェッテを繰り返しても軸がぶれない。グラン・ジュッテしながら舞台をスピーディーに旋回し、その開脚は男性ダンサーだけど180度きっちり。それでいて常に余裕のスマイル。
今までチケットを取る日は女性ダンサーで決めてたけど、これからはマックレーの配役の日を取ろう、と思った。


さて、開演前やインターバルにドキュメンタリー映像"A Very English Ballet - Part 1", "A Very English Ballet - Part 2"が流れる(※以下に出てくるセリフの訳は何となく合っているとは思うけど、正確な訳じゃありません。)


フレデリック・アシュトンが60年代に再振付した現在のラ・フィーユ・マル・ガルデは、その振付の多くの部分が農村のダンス、すなわちフォークダンスを参照している。クラシック・バレエの技法を使いながらも、大勢の男女が輪になったり鎖になったりする構成や、スキップしながら笑顔で動き回る振り付けは、フォークダンスそのものである。


モニカ・メイスン: 「フレデリック・アシュトンは英国の田舎のダンスをいろいろ調べたんでしょうね。彼は伝統的なイギリスのダンスをとても愛していた。・・・多様な地方のダンスをクラシックのステップに編み込んだのは素晴らしいわね。」

レスリー・コリア: 「・・・だって子供たちはスキップからダンスを学び始めるんだものね。」

モニカ・メイスン: 「ニネット・ド・ヴァロア(ロイヤル・バレエ・スクールの創始者)は、カントリーダンスを学校の教育に取り入れたし、舞台上でも振付家にカントリーダンスをよく見ることを奨励してたわ。」

フィリップ・モーズリー: 「ロイヤル・バレエ・スクールではいろんな地方の伝統的なカントリーダンスを学ぶんだ。」


ラ・フィーユ・マル・ガルデを見ていて心地よいのは、昔の人々が収穫の喜びやお祝いの喜びを心のままに踊ったDNAが現代の人々の中に受け継がれているからだと思う。現代のイギリスの若者がフォークダンスを日常的に踊っているとは思えないけど、パーティーになると何かと踊り出すこの国の人々を見ていると、フォークダンスを愛したイギリス人がその中に息づいているのを感じる。


そして、木靴のダンスの木靴について。それぞれの木靴の裏には、過去の持ち主の名前が書いてあるらしい。
「私の木靴はね、・・・キャラクターダンスのプリンシパルのものだったのよ。」「えーと私のはね・・・」
リーズの友人を踊るバレリーナたちが靴を裏返して笑い合う。
木靴のダンスの中心を踊るシモーヌ役のモーズリーは、

モーズリー: 「この役が終わったらこの木靴は衣裳係に返すことになるんだけど、僕は返さないよ。だって、この木靴の元々の持ち主は僕の師匠なんだ。役を受け継ぐ歴史を感じるよね。」

そして、モニカ・メイスンが、「バレエ団のみんなには、この振付を踊ることで、アシュトンを理解して、彼の思想を受け継いでいってほしい」と締めくくる。


芸術監督やバレエ・マスターたちはアシュトンが存命時代に接して教えを乞うてきた人々。しかし、今のダンサーたちはアシュトンその人を直接は知らない。しかしアシュトンのダンスを踊ることで彼の思想ひいてはイギリスの伝統的なフォークダンスへの愛を引き継ぐことになる。”ダンスが媒介となる”という考えが、この英国ロイヤル・バレエを特別な存在にしているのだと思った。
[PR]
by tsutsumi_t | 2012-05-20 08:39 | ダンス


バレエ、ダンス全般、建築についてのブログ。


by Tsutsumi

プロフィールを見る
更新通知を受け取る

カテゴリ

全体
ダンス
ダンス(日本)
演劇
オペラ
ミュージカル
歌舞伎
ストリート
読書
子育て
わたしのこと
未分類

最新の記事

山上憶良をすこしよむ
at 2017-07-26 21:56
百人一首が頭を行き交う
at 2017-07-12 20:59
0か月~2か月の頃はなんだか..
at 2017-07-04 00:01
ショパン
at 2017-04-17 20:50
お裁縫にハマる
at 2016-12-14 16:21

以前の記事

2017年 07月
2017年 04月
2016年 12月
2016年 11月
2016年 10月
2016年 07月
2016年 04月
2016年 02月
2016年 01月
2015年 05月
2015年 04月
2015年 02月
2014年 11月
2014年 09月
2014年 07月
2014年 02月
2013年 12月
2013年 10月
2013年 09月
2013年 08月
2013年 07月
2013年 06月
2013年 05月
2013年 03月
2013年 02月
2013年 01月
2012年 12月
2012年 11月
2012年 10月
2012年 09月
2012年 08月
2012年 07月
2012年 06月
2012年 05月
2012年 04月
2012年 03月
2012年 02月
2012年 01月
2011年 12月
2011年 11月
2011年 10月
2011年 09月

最新のトラックバック

プロフィール

Tsutsumi

Mechanical engineer / Architect

建築学科を卒業、日本の建築設計事務所で働いた後、2011年に渡英。
バレエやダンス全般の観劇についてここに記しています。

(追記)2013年4月に日本に帰国しました。

(追記)2016年12月に出産しました。観劇はなかなか難しく、ブログの内容が子育てにシフトしてきています。

検索

タグ

その他のジャンル

記事ランキング

ブログジャンル

子育て
日々の出来事

ブログパーツ