英国ロイヤルバレエ『Ballo Della Regina / La Sylphide』 2012年6月12日

ロイヤルオペラハウスにて、英国ロイヤルバレエのダブルビル。ジョージ・バランシン振付の『Ballo Della Regina(王妃の舞踏会)』,ブルノンヴィル版をヨハン・コボーが改訂・ステージングした『La Sylphide(ラ・シルフィード)』。

『Ballo Della Regina(王妃の舞踏会)』

Marianela Nunez(マリアネラ・ヌニェス)
Nehemiah Kish(ネマイア・キッシュ)

ジョージ・バランシンがニューヨーク・シティ・バレエのために振り付けたもので1978年初演とのこと。同じくバランシンがニューヨーク・シティ・バレエに振り付けた『Jewels(ジュエルズ)』も今シーズン初めに上演されていたので、それとの類似を考えながら見ることができた。

クラシックのルールに忠実で整然とした印象を持った。しかし、ところどころ、脚を段階的にカクカクを下したり、曲げたりする動きなどがアクセントになっており、クラシックから逸脱するので「おっ?」と意表をつかれる。
『ジュエルズ』も同様の振付だったように記憶している。バランシンの作品リストを見るとかなりの多作で、しかもバレエ・リュスに始まりアメリカで死ぬまでに様々なバレエ団のほか、ミュージカルとも活動している。バレエの訓練を受けたバレリーナのみならず、ミュージカルやショーダンサーとも一緒に活動したことが、彼にこうしたアクセントとなる動きを作り出させたのだろうか?
多作なバランシンの作品群は、若い頃から後期の作品まで、渡り歩いた国々や共に活動したダンサーたちの影響を受けて、様々に異なっているのではないだろうか?できる限りのリバイバルを見てみたいと思った。

ヌニェスはビカーッと輝く太陽のようなダンサーで、逆にキッシュがふんわり優しい雰囲気なので、二人が踊るとどこか「ヌニェスに振り回されるキッシュ」という雰囲気に見えたのが可笑しかった。


『La Sylphide(ラ・シルフィード)』

デンマークで生まれたブルノンヴィル版を、デンマーク出身のヨハン・コボーが改訂しリステージしている。

THE SYLPH(シルフ) : Alina Cojocaru(アリーナ・コジョカル)
JAMES(ジェームス) : Johan Kobborg(ヨハン・コボー)
MADGE(マッジ) : Kristen McNally

コジョカルお得意の役だと思ったし、シルフの無邪気で儚くかわいい雰囲気がこれほどぴったり当てはまる人は他に無いんじゃないかと思った。
人間になれるという布(本当は呪いのかかった布)にじゃれつくシルフが、布にからまった瞬間に苦しみ出して、指輪をジェームスの手に落としてあっという間に息絶えてしまうまで、短い時間にジェットコースターのように観客を巻き込んでしまった。泣いている観客もいるらしかった。

つかまえようとする手をすり抜けていくシルフを追いかけ、呪いの布をシルフにかけて、やっとシルフを捕まえることができた瞬間のコボーの仕草はさすが本物のカップルという気もした。なんとなく最近のコボーは芝居の部分で注目されていることが多い気がする。

私はコボーによる改訂がどの部分なのか知らないのだけど、もしかしたら踊りの合間にあるコミカルな芝居部分ではないかと思った。そこだけ舞台上のダンサーたちが現代の若者風に見えて、少し浮いていたから。

バレエ・ブラン(白いバレエ)三作として、『白鳥の湖』『ジゼル』とひとくくりにされることがある『ラ・シルフィード』。(三作とも人らしき姿をした異界の存在たちの話だが、『白鳥の湖』の白鳥たちが嘆きや悲しみを湛え、『ジゼル』に出てくる妖精ウィリーは冷たく恐ろしい、それぞれ”陰”な存在なのに対して、『ラ・シルフィード』に出てくるシルフは無邪気でいたずらっこで”陽”な存在である。)
『ラ・シルフィード』が『白鳥の湖』や『ジゼル』と同じくらいメジャーでないのはなぜだろうか。
『白鳥の湖』では最後に二人が愛を貫き、『ジゼル』では裏切った男が死んだ女に最後に許され、それぞれに納得のいく結末がある。しかし、『ラ・シルフィード』では無邪気なシルフが残酷にも息絶え、ジェームスはシルフも婚約者も失い、自分も死んでいく、という結末で、観客に納得をうながすものが何もない。
『ラ・シルフィード』は、スコットランド風のダンスや、無邪気に飛び回っていたシルフがみるみると息絶えていく儚さなど、踊りとして見どころはあるものの、ストーリーの中から得られる感動が少ないことが、『白鳥の湖』『ジゼル』に水をあけられた原因ではないかと思う。

ところで・・・、ジェームスは明らかにマリッジブルーなわけである。
男性にマリッジブルーなんてあるのかな、と思ったら、元々の原作は、”シルフ”ではなくて”ゴブリン”、”農夫”ではなくて”漁師の妻”、だったらしい。つまり男女が逆、バレエの台本にするときに男女の役割を入れ替えたらしい。マリッジブルーとは昔から一般的に存在するんだなぁ、と妙に納得した。
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by tsutsumi_t | 2012-06-26 18:01 | ダンス


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Tsutsumi

Mechanical engineer / Architect

建築学科を卒業、日本の建築設計事務所で働いた後、2011年に渡英。
バレエやダンス全般の観劇についてここに記しています。

(追記)2013年4月に日本に帰国しました。

(追記)2016年12月に出産しました。観劇はなかなか難しく、ブログの内容が子育てにシフトしてきています。

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