人気ブログランキング |

英国ロイヤルバレエ『BIRTHDAY OFFERING / A MONTH IN THE COUNTRY / LES NOCES』 2012年7月6日

ロイヤルオペラハウスにて、トリプルビル『Birthday Offering / A Month in the Country / Les Noces』を観る。フレデリック・アシュトン振付の2作のほか、バレエ・リュスの立役者の一人ブロニスラヴァ・ニジンスカ振付の復刻版1作。このトリプルビルが事実上、レパートリーから選ばれるシーズン最後の演目。


『Birthday Offering(誕生日の贈り物)』

フレデリック・アシュトンが1956年に振り付けた小品集。”誕生日”とは、ロイヤルバレエというカンパニーの25周年(当時)の誕生日の意味だそうだ。当時、ロイヤルバレエが誇った7人のバレリーナの魅力をそれぞれ個性的な7つのバリエーションで見せ、そしてプリマバレリーナ、マーゴ・フォンテインを高度なテクニックを必要とする美しいパ・ド・ドゥで見せ、観客をうならせる、というものだったらしい。

今回、マーゴ・フォンテインに当たる役を踊ったのは、Marianela Nunez(マリアネラ・ヌニェス)。相手役はThiago Soares(ティアゴ・ソアレス)。

シーズン終盤でもヌニェスの勢いは止まらない。どんなに難しい足さばきも回転も難なくこなしていく。
7つのバリエーションの中では、ユフィさんの柔らかい雰囲気、モレラのシャープな雰囲気がそれぞれ強調されて踊られていて楽しめた。それ以外のバリエーションはわりとどれも似通って見えてしまったので、こうして7つもバリエーションの並べた中では、振り付けの鋭さを多少大げさに強調したモレラはさすがベテランだと思った。


『A Month in the Country(田園の出来事)』

同じくフレデリック・アシュトン振付だが、初演は1976年。ツルゲーネフの戯曲を一幕のバレエに仕立て直したものだそうだ。
豪華な屋敷の中で、頼もしい夫と、自分の信奉者である夫の友人、息子、養女と共に暮らすナターリア。内心、日常に飽いている彼女は、息子の若い家庭教師が来たところでたちまち彼に恋してしまうものの、養女も彼に恋してしまったために一悶着起こり、結局、彼は去り、夫の友人も去り、結局、彼女の手には元通りの倦怠な日常が残る・・・という話。

NATALIA PETROVNA(ナターリア) : Alina Cojocaru(アリーナ・コジョカル)
YSLAEV(ナターリアの夫) : Jonathan Howells
VERA(ナターリアの養女) : Iohna Loots
RAKITIN(夫の友人) : Johannes Stepanek(ヨハネス・ステパネク)
BELIAEV(息子の家庭教師) : Federico Bonelli(フェデリコ・ボネリ)

オリジナルは戯曲だそうだけど、セリフの不在のせいか、男性陣の演技不足なのか、はたまた私のせいなのか、芝居の細かな設定までは読み取れなかったのが残念だった(例えば、なぜ夫の友人までもが去るのか?など。プロットを読んで初めて分かった。)。


『Les Noces(結婚)』

1923年にブロニスラヴァ・ニジンスカがバレエ・リュスのためにストラヴィンスキーの音楽に振り付けた『結婚』。後年、ニジンスカはアシュトンに招かれて、この『結婚』を英国ロイヤルバレエに再度振り付けたそうだ。

THE BRIDE : Kristen McNally
THE BRIDEGROOM : Valeri Hristov

ロシアの農村で起こる一組の結婚の儀式。
花嫁の家。花嫁と彼女を囲む村の乙女たち。花嫁の長い長い三つ編みを握って、厳かに踊る。こちらを無表情に凝視する乙女たちの視線。花嫁の大きな不安と静かな決意の現れなのか。
次に花婿の家。村の若者たちが打楽器のリズムに乗って足を力強く踏み鳴らす。花嫁を迎える心の高揚なのだろうか。しかし花婿の顔も若者たちの顔もやはり同じく無表情だ。
花嫁が送り出される。部屋は暗く、高い高い黒い壁がそそり立ち、小さな窓が遥か高くにぽつりとある。
花嫁と花婿、それぞれの両親が中央に座り、手前では乙女たちと若者たちが、ストラヴィンスキーの凶暴的なまでのリズムに合わせて足を踏み鳴らし、舞台を跳ぶ。彼らの力強い踊りは二人への祝福なのだろうか。彼らの顔は依然として無表情であるが、舞台上で一体となってユニゾンで動く彼らからは抗えない何か大きなパワーが溢れている。
やがて、花嫁と花婿が部屋の奥へと静かに消えていく。

全体に漂う不気味さと異様な高揚感。抵抗できない大きな力を感じた。幕が下りた瞬間に周囲からは"Amazing!"の声が上がり、私も終始手すりをぎゅっと握っていたことに気付く。

現芸術監督モニカ・メイスンが最後の演目としてこの『結婚』を選んだのは、大きな功績だと思う。
今日のバレエの隆盛を、20世紀初頭のバレエ・リュスの活動にさかのぼり、その遺産といえるレパートリーを確かに後世へ受け継いでいこうという意志だろう。


なお、初めて観て感じるのはまず”不気味”さだ。ダンサーの動きも表情もシュールだ。
バレエ・リュスが”ロシアのバレエ”と名乗りながら、彼らがときに、クラシック・バレエからかなり遠ざかった異質なダンスを生み出したのはなぜなのか?

前衛的なストラヴィンスキーの音楽『結婚』は、民俗的色合いが濃いと言われ、「原始主義時代」に分類されるそうだ。自分の推測では、ダンスの動きにも多分にロシアの農村の民俗舞踊(フォークダンス)が参照されているのではないだろうか、と考えている。最初は、なぜ旧態のロシアでいきなりこんな前衛的なものができたのか、と考えてしまっていたけど、むしろ古くから伝わる動きが取り入れられているのではないだろうか、と推測している。
ストラヴィンスキーとバレエ・リュスが組んだ作品『春の祭典』やこの『結婚』については、少しずつちゃんと調べていきたいと思った。

LES NOCES 1/3


LES NOCES 2/3


LES NOCES 3/3

by tsutsumi_t | 2012-07-10 06:32 | ダンス


バレエ、ダンス全般、建築についてのブログ。


by Tsutsumi

プロフィールを見る
更新通知を受け取る

カテゴリ

全体
ダンス
ダンス(日本)
演劇
オペラ
ミュージカル
歌舞伎
ストリート
読書
子育て
わたしのこと
未分類

最新の記事

山上憶良をすこしよむ
at 2017-07-26 21:56
百人一首が頭を行き交う
at 2017-07-12 20:59
0か月~2か月の頃はなんだか..
at 2017-07-04 00:01
ショパン
at 2017-04-17 20:50
お裁縫にハマる
at 2016-12-14 16:21

以前の記事

2017年 07月
2017年 04月
2016年 12月
2016年 11月
2016年 10月
2016年 07月
2016年 04月
2016年 02月
2016年 01月
2015年 05月
2015年 04月
2015年 02月
2014年 11月
2014年 09月
2014年 07月
2014年 02月
2013年 12月
2013年 10月
2013年 09月
2013年 08月
2013年 07月
2013年 06月
2013年 05月
2013年 03月
2013年 02月
2013年 01月
2012年 12月
2012年 11月
2012年 10月
2012年 09月
2012年 08月
2012年 07月
2012年 06月
2012年 05月
2012年 04月
2012年 03月
2012年 02月
2012年 01月
2011年 12月
2011年 11月
2011年 10月
2011年 09月

最新のトラックバック

プロフィール

Tsutsumi

Mechanical engineer / Architect

建築学科を卒業、日本の建築設計事務所で働いた後、2011年に渡英。
バレエやダンス全般の観劇についてここに記しています。

(追記)2013年4月に日本に帰国しました。

(追記)2016年12月に出産しました。観劇はなかなか難しく、ブログの内容が子育てにシフトしてきています。

検索

タグ

その他のジャンル

記事ランキング

ブログジャンル

子育て
日々の出来事

ブログパーツ