英国ロイヤルバレエ『METAMORPHOSIS TITIAN 2012』 2012年7月14日 その2: TRESPASS

ロイヤルオペラハウスにて鑑賞した『METAMORPHOSIS:TITIAN 2012』の2作品目、『TRESPASS(トレスパス)』。なお、全体の概要と1作品目『MACHINA(マキナ)』はこちら。


『TRESPASS』


振付:Alastair Marriott, Christopher Wheeldon(クリストファー・ウィールドン)
デザイン:Mark Wallinger(マーク・ウォーリンジャー)


半円状の筒で舞台袖をぐるりと覆い、その内側にもう一つ半円状の筒になったマジックミラーを置き、ダンサーたちはそのマジックミラーの後ろから、弧を描いて飛び出してくる。舞台袖が無くなったお陰で、ダンサーたちの舞台への入りかた・引き方が見慣れたものと全く違っていて面白かった。

(写真はこのサイトでいろいろ見れるみたいです。ただ、舞台全景が分かる写真が無いのが残念。。。
http://www.flickr.com/photos/dancetabs/sets/72157630573329332/with/7568972776/

試みが革新的でも、デザインとダンサーが切り離されて見えた1作品目『MACHINA』とは対照的に、舞台のデザインと振付がうまくコラボレーションして1つの作品になっていたのが、この2作品目『TRESPASS』。舞台袖を覆ってしまうという、ほんのちょっとした操作で、最大限の効果が生まれたのではないか。

ベアトリクス・スティックス=ブルネルが元気いっぱい若々しく踊る。次のサラ・ラムは超人的な柔軟性を見せつけ、どこか斜に構えた雰囲気。最後にメリッサ・ハミルトンが成熟した色っぽさを見せる。
振付は、高くリフトされたバレリーナが、足首をひねってくつろいだ様子を見せたり、リフトされたままカニのように平行移動していったり、美しくおしゃれな動きにちょっとユーモラスな動きが混じる。こういう粋な雰囲気はウィ―ルドンの作品によく現れる気がする。

この作品のテーマはおそらく”覗き見”なんじゃないかな。Titianの絵画の中では『ディアナとアクティオン』(アクティオンが狩りの最中にうっかりディアナの入浴をのぞき見てしまう)にインスパイアされているだろう。


マーク・ウォーリンジャーはターナー賞受賞アーティスト。
その作品はコンセプチュアルなものがほとんどで、ちょっとオタクな雰囲気がある(と私は思っている)。夜中にベルリンのガラス張りの美術館(ベルリン国立近代美術館)の中に熊の着ぐるみを着て佇み、道行く人の注意を引く・・・というビデオ作品を昔見たことがある。

今回、アーティストたちは彼ら自身の作品をNational Galleryでも展示しているのだけど、ウォーリンジャーがこのコラボに関連して製作し展示している彼自身の作品は、バスルームの中に本物の女性を配し、その割れた窓や鍵穴から観客に覗き見させる・・・というもの。なかなか良く見えないのでついつい良く見える位置を探したりしちゃって、いい歳した紳士が覗き見しているのをはたから見るとちょっと恥ずかしい。
今回の”覗き見”といい、ちょっと悪趣味な人間の習性をつっついて暴きだすのが好きなアーティストらしい。

ちなみに、ウォーリンジャーはこの作品のために、バスルームの中の女性:ディアナを、Twitterで公募したとか。ディアナたちは7人くらいいてパートタイム制らしく、私がNational Galleryで見たときには、ちょうどチャイムが鳴り、警備員が「ディアナの交代の時間です~。みなさんちょっとの間、外に出ていてください~」と部屋から観客を追い出していた。


振付家とアーティストは、普段用いる表現方法も、主張の方法も、全く異なるだろうし、そのコラボレーションは簡単ではないだろう。しかし、その困難を乗り越えて、この作品はテーマにきっちりフォーカスしていて、それのための舞台装置が効果を発揮していて、振付がその舞台装置を最大限に活用していて、全ての要素がうまく噛み合っていたように思う。


(追記)
追記というほどのことでもないのだけど、英国ロイヤルバレエの公演はもちろん写真を取ることができないので、記事がどうしても言葉のみになってしまいます。どうにも分かりにくいし、ブログの見た目がつまらなくなるのが悩み所。
他の劇場だと休憩時間に幕が上がっていることが多いので、せめて舞台装置だけでも写真におさめてみたりしてるのですが、ロイヤルオペラハウスはがっちり緞帳が下りているので、どうにもしがたいです。
配役表を写真に撮って載せてみようかなぁ。。。それじゃつまんないよねぇ。。。

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by tsutsumi_t | 2012-08-12 20:10 | ダンス


バレエ、ダンス全般、建築についてのブログ。


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プロフィール

Tsutsumi

Mechanical engineer / Architect

建築学科を卒業、日本の建築設計事務所で働いた後、2011年に渡英。
バレエやダンス全般の観劇についてここに記しています。

(追記)2013年4月に日本に帰国しました。

(追記)2016年12月に出産しました。観劇はなかなか難しく、ブログの内容が子育てにシフトしてきています。

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