ROH2『Wayne McGregor | Random Dance』 2012年11月24日

ロイヤル・オペラ・ハウス内の小劇場Linbury Studio Theatreで、3人の若手振付家の作品を、ちかちゃん、まるやまくん、旦那さんと一緒に見た。
3人の若手振付家の3作品のうち、2つをウェイン・マクレガー率いるランダム・ダンス(Wayne McGregor | Random Dance)が踊り、1つを英国ロイヤルバレエのダンサーが踊った。

ROH2というのは、ロイヤル・オペラ・ハウス内の組織の一つで、よりコンテンポラリーでオルタナティブな活動を目指している。公演は主にロイヤル・オペラ・ハウス内の小劇場Linbury Studio Theatreで行われており、実験的でイキのいい作品が上演されている。
この公演もROH2の企画である。


『HERTZ』

振付:Alexander Whitley
ダンサー:ランダム・ダンス

最初、紗幕を通した向こうにぼんやりとダンサーが浮かびあがる。輪郭のぼやけたダンサーたちがゆったりと動く。はじめ緩やかな動きだったダンサーたちは徐々に速さを増していき、紗幕が取り払われた後半は音楽もダンスもキレのよい激しいものとなる。

プログラムによると、「波形理論」「光の粒子のふるまいを説明する量子力学」からダンスのアイディアを得ているらしい。そして特に、「世界を可視化する媒介としての光」の追及をテーマにしているらしい。

紗幕を通した演出は、幻想的な雰囲気やくっきりとしていく後半との対比が利いていてとてもよかった。また、横からの照明をふいに上からに切り替え、舞台の雰囲気を一瞬にしてガラリと変えてみせたり、「光」の使い方が技巧的でよく効果を発揮していた。

振付の方は、さすがに「量子力学」は読み取れないけど(そりゃ分らんよ・・・)、慣性の法則を強く感じさせる動きとか、規則的に並んでる粒子が何かの刺激でくっついたり離れたりするふるまいを想像できるような、個性的な動きが面白かった。


『ALPHA EPISODES』

振付:Paolo Mangiola
ダンサー:Paul Kay(ポール・ケイ), Eric Underwood(エリック・アンダーウッド), Edward Watson(エドワード・ワトソン)

3人のロイヤルバレエの男性ダンサーが踊った。
テーマは「新たな男性性」の追及だと思う。
プログラムによれば、伝統的な男性のイデオロギーを分析し、現代社会における”alpha male(男性指導者?)”と呼ばれるものを追及したそうだ。

エドワード・ワトソンそのものを表したような作品だった。明らかに彼を意識して製作されているし、ワトソン無しでは成り立たない作品でもあった。
作品中、ワトソンは男性なのか女性なのかよく分からない。その力強さは男性のように感じられるし、その柔らかさは女性のように感じられるし、でもそれが同時に示されるので、ジェンダーを超えたある美しい人を見ているようだった。舞台に立ったワトソンの身体は完璧に均整が取れていて、まるで彫像が動きだしたかのようだった。


『LIFE'S WITNESS』

振付:Robert Binet
ダンサー:ランダム・ダンス

舞台裏を隠す幕は取り払われ、舞台上に音楽家たちも座って演奏した。
深い眠り、精神の分離、精神の解放のように、人間に何かが欠けた不完全な状態を追及する作品らしい。

と、あまりプログラムの説明からは分かりにくいのだけど、たぶん、個々人の存在と他人との距離感・人間関係がテーマ(うぅ、でもたぶん合ってる)。
最初の2つの作品が期待以上になかなか良かったので、この3作目はすっごくいいのかも?と期待して臨んだら、実はこれは見ていて少し飽きてしまった。テーマが陳腐だったせいもあると思う。



3作全て若手振付家の作品、ということで面白いかどうか心配だったのだけど、結果、とても楽しめた。
そして、イギリスではこうして若手振付家がオペラハウスのような大きな機関から支援を受けて、作品を優秀なダンサーたち、信頼できる劇場で発表できる環境がある、というのも素晴らしいと思った。

一緒に見た友人たちは日本へ帰国寸前で、一度ロイヤル・オペラ・ハウスでバレエを見たい、と旦那さんが相談を受けたことがきっかけだったのだけど、「白鳥の湖」は売り切れ、当日券は取れるとは限らないし、「マクミランのトリプルビル」は少々マニアックだし・・・と考えて、そして、小さい劇場だけど質のいい挑戦的な作品を上演するROH2に誘った。彼らはデザイナーということもあって、舞台の紗幕や照明の使い方まで含めて、楽しんでくれたようで良かった。

-----------

さて、実はこの日、びっくりしたことがいっぱいあった。

まず、公演前、ロイヤル・オペラ・ハウスに向かう途中、劇場の近くまで来て道を曲がろうとして、ふと前から歩いてくる人の顔を何気に見たら、なんとコジョカルだった。ニット帽を被り、ジーンズを履いて、小さなスーツケースを引いている姿はとっても小さくて小さくて、正直なところ同い年くらい(というか同い年なんだけど)の普通の女の子でびっくりした。

そして、公演の休憩中、ロビーで歓談してる人々の中に、ロイヤルバレエのダイレクター、ケビン・オヘアを発見。彼もこの公演を見に来ていた。背筋の伸びた姿はさすが元ダンサー。

公演終了後、ロビーで友人を待っていたら、なんとワトソンがもう私服に着替えて、同じくロビーで誰かを待っていた。革ジャンにジーンズ、リュックをしょったワトソンは、舞台で見るよりも小さく見えて、舞台で観た妖しいまでの美しさは消えていた。(ダンスの力ってすごい・・。)帰りがけの観客の中には彼に気付く人もいて、感想を話しかけている人も何人かいた。

というラッキーな幸せ。
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by tsutsumi_t | 2012-11-29 01:32 | ダンス


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Tsutsumi

Mechanical engineer / Architect

建築学科を卒業、日本の建築設計事務所で働いた後、2011年に渡英。
バレエやダンス全般の観劇についてここに記しています。

(追記)2013年4月に日本に帰国しました。

(追記)2016年12月に出産しました。観劇はなかなか難しく、ブログの内容が子育てにシフトしてきています。

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