『TATYANA』 Deborah Colker 2013年2月8日

ブラジル出身の振付家Deborah Colker(デボラ・コルカー)率いるCompanhia de Dança Deborah Colker(デボラ・コルカー・ダンス・カンパニー)によるコンテンポラリー・ダンス『TATYANA』をバービカン・センターで観る。
これもプーシキンの韻文小説『エフゲニー・オネーギン』を元ネタとしている。



全2幕。
オネーギンがレンスキーを決闘で殺してしまうところで1幕が下りる。
2幕はオネーギンとタチアーナの邂逅。
舞台の真ん中には、木製の塔とそこから舞台の床へ向かって四方八方にぐねぐねした橋が飛び出ている。ここをダンサーたちが座ったり歩いたり飛び乗ったりぶらさがったりする。


なんと、複数のダンサーが一つの役を演じる。
1幕では4人のオネーギン、4人のタチアーナ、4人のオルガ、4人のレンスキー。
2幕では8人のオネーギン、8人のタチアーナ。(2幕ではオルガとレンスキーが登場しないので、それぞれのダンサーたちは2幕ではオネーギンとタチアーナに加わってしまうのだ!)
同じ役のダンサーたちは全く同じ衣裳を着ているので分かりやすいが、その体格や年齢、顔立ちはさまざまだ。

振付家のコルカー氏によると、登場人物の性格の多面性を表現するためとか。
常に4人全員で踊っているわけではなく、1人しかいないときもあれば4人全員舞台上にいるときもあり、相手と踊るときも1対4だったり4対4だったりいろいろ変わる。

例えば、木製の塔の影にぽつんと一人でいたタチアーナが、登場したオネーギンにふと興味を持つと、ぞわぞわっと一気にタチアーナが4人に増えたりして、彼女の好奇心がよく伝わってくる。
1人のオルガを3人くらいのレンスキーでリフトしてパ・ド・ドゥ(ドゥじゃないけど)を踊ると、オルガが大切にされていることがよく分かる。
また、思い悩むタチアーナが、大きな舞台装置のあちこちで座り込んだり膝をかかえたりしていると、彼女の悩みの深さを強く感じる。
タチアーナの夢の中は、目隠しをした1人のタチアーナが大勢のオネーギンと踊り、彼女の恍惚とした夢心地が伝わってくる。
オネーギンとレンスキーの決闘はステッキを持った4人のオネーギンと、扇子を振り回す4人のレンスキー。4倍に迫力も増す。

一つの役を複数の人間で演じると、表現の幅がこんなにも広がるんだな、と思った。
特に、この『エフゲニー・オネーギン』という原作は、この手法によく合っていると思う。
オネーギンの性格が複雑なこと。登場人物の少なさと人間関係のシンプルさ。
振付家が、複数人1役で演じることを決めたのと、題材を『エフゲニー・オネーギン』に決めたのは、どっちが先だったのだろう?


もうひとつ。なんと、原作の著者プーシキンが出てくる。
登場人物はオネーギン、タチアーナ、オルガ、レンスキーのみだが、狂言回しとしてプーシキンが出てくる。プーシキンは2人1役でやっていて、そのうち一人は振付家コルカー氏本人だ。
プーシキンは登場人物たちを、時に導き、時に彼らの行動に嘆き、そして慰め、受け入れ、常に見守っている。

コルカー氏はオリヴィエ賞も受賞したことがある実力派の振付家だそうで、YouTubeで過去の振付作品を見ると、今回のようにセットに登れるような大掛かりな舞台装置を用いたものが多い。シルク・ド・ソレイユの振付もしたことがあるそうで、言われてみると確かに、今回の『TATYANA』も、大きななセットとからむアクロバティックな動きが多く、エンターテイメント性の強いダンスだった。


なお、その他、ちょいちょい気に入った動きが幾つかあった。
タチアーナが手紙を書くシーン。大きな黒い羽ペンを持ったタチアーナが、文字を腕に胸に身体中に書く(ような仕草をする)のが官能的で美しい。
1幕では裸足だったタチアーナが、美しい大人の女性へと変貌している2幕ではトゥシューズを履いているのも面白い趣向だと思った。(ただそのせいで2幕はスピード感が消えてだるくなったのが残念だったけれど。)


今年は何かプーシキンの記念の年?
ロイヤルオペラハウスの方は、バレエの他にオペラの『Eugene Onegin』も上演中だ。これは今月下旬に映画館に中継されるので、映画館で観て見たいなと思っている。
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by tsutsumi_t | 2013-02-09 11:36 | ダンス


バレエ、ダンス全般、建築についてのブログ。


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Tsutsumi

Mechanical engineer / Architect

建築学科を卒業、日本の建築設計事務所で働いた後、2011年に渡英。
バレエやダンス全般の観劇についてここに記しています。

(追記)2013年4月に日本に帰国しました。

(追記)2016年12月に出産しました。観劇はなかなか難しく、ブログの内容が子育てにシフトしてきています。

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