英国ロイヤルバレエ『APOLLO / 24 PRELUDES / AETERNUM』 2013年3月7日

ロイヤルオペラハウスにて、旦那さんとタケさんと一緒に観る。
ジョージ・バランシン(George Balanchine)がバレエ・リュス時代に制作した『APOLLO(ミューズを導くアポロ)』。
ボリショイ・バレエの元・芸術監督であり、今はアメリカン・バレエ・シアターの常任アーティストであるアレクセイ・ラトマンスキー(Alexei Ratmansky)の新作『24 PRELUDES』。
そして、英国ロイヤルバレエおなじみの振付家クリストファー・ウィールドン(Christopher Wheeldon)の新作『AETERNUM』。
歴史的名作1つに、ワールド・プレミア2つのトリプルビル。


『APOLLO(ミューズを導くアポロ)』 振付:ジョージ・バランシン

バレエ・リュス最後の振付家、ジョージ・バランシンが1928年に振付した作品。たった24歳のバランシンにとってはキャリア初期の作品であり、アメリカへ移住前の作品中では最も重要な作品と言える。
バランシンについては評論などから、”ストーリーがもたらす感動よりも、身体が作り出す純粋な美を追及した振付家バランシン”というのをまんま受け取っていたので、ストーリーは無いんだな、と思って臨んだら、それなりにプロットはあった。


幕が上がると、高い台に乗った一人の女性がお腹をさすって苦しんでいる。そして、その台の下から、”ぴょん”とアポロが飛び出してくる。アポロの誕生である。生まれたてのアポロはぎこちなく動き始める。
この後、暗転してからまた明るくなると、アポロとミューズ3人の踊りになる。

このミューズ3人のバリエーションがめちゃくちゃ面白かった…!!!「えっ何この動き!?」と思うようなユーモアたっぷりの奇抜な動き満載だった。

まず叙事詩を司るカリオペー。
アラベスクしながら、大きく開けた口から上へ向かって何かブワーッと吐き出す仕草をする。詩を司る彼女の口から、きっと言葉が次々と生まれているのだろう。踊り終わって、口から吐き出した詩(なのかな?)を手のひらに載せてアポロに見せるが、アポロはお気に召さない様子。

次にマイムを司るポリュムニアー。
人差し指を唇に当てて「シィーッ」の仕草をしたまま踊り続ける。3人のミューズの中では一番アップテンポでダンスもかわいらしい。最後、何かにびっくりして声を出してしまった様子。「やばっ」といった風情で口を塞いで、アポロの前からこそこそと退場していく。マイムだから声を出しちゃいけなかったのに…という設定らしい。

そして音楽と舞踊を司るテルプシコラー。
身体の曲線ラインを生かしたなまめかしいポーズをキメながら踊るテルプシコラー。ときどきヨロけるも(もちろん振付)、最後は見事に身体を逸らせてフィニッシュ。しかしアポロは「あっち行け」とでも言いたげに彼女を追いやる。

ここからアポロのソロが始まる。音楽も男らしく、ダンスも、上へ向かって突き出される腕の直線的なラインや、舞台の床に突き立てる足の鋭さ、握った手を大きく開くその勢い、アポロの絶対的な力強さが協調される。
今日のアポロは、客席二千人の女性が恋するボネリ。(※もちろん観客は女性のみではありませんが…。)カリスマ十分だった。

その後、アポロと3人のミューズの4人で踊る。
3人のミューズはまるで葦がそよぐみたいに、アポロに従順に踊る。3人がつま先を揃えてアポロに足を差しだすフォーメーションや、アポロの腕に鎖が繋がるように腕をからめるフォーメーションは、本当に写真に永遠に残したい!と思うほど美しい。

最後、ゼウスから呼び出されてみんなでパルナッソス山(に見立てた階段)をのぼっていくシーンでお終い。


動きが面白くて、つらつらと説明してしまった。

バランシンは身体が表す美を追求した、と最初に書いたけれど、確かにここでプロットは奇抜な動きを生みだすきっかけに過ぎない。この後、バランシンは本格的にアブストラクトな振付を次々と作り始めるので、この作品はその指向が現れ始めたものを言えそうだし、身体の持つ表現力にバランシンが自信を持つに至った作品なのだろうな、と思った。


『24 PRELUDES』 振付:アレクセイ・ラトマンスキー

世界中のバレエ団がラトマンスキーに振付して欲しがっているそうだ。この作品は、そのラトマンスキーがロイヤルバレエに初めて振り付けた作品。
そんな彼は相当多忙だったのだろうか…?かなり細切れな作品だった。たぶん本当に24つの踊りがあったと思う。

私が勝手にイメージしたのは、ピクニックに来た男女4組のカップルの喜怒哀楽、といった感じ。
正直なところ途中で飽きてくるのだけど、男性ソロになると俄然メリハリが効いてて良かった。特にセルヴェラのソロとワトソンのソロ。ワトソンはエレガンスからは遠いけれど、剃刀のように研ぎ澄まされた輝きがある。


『AETERNUM』 振付:クリストファー・ウィールドン

電車の中で拾ったTime Out誌を読んでいたら、ウィ―ルドンがこの作品について語っているインタビュー記事を見つけた。それによると、マリアネラ・ヌニェスが踊ることをイメージしてこの作品を制作したらしい。ヌニェスは制作意欲をかきたててくれる素晴らしいバレリーナだ、というようなことが書いてあった。

ヌニェスとキッシュのメインカップルと後ろの4組のカップルで踊る神秘的な"I"。足をライフル銃のように客席へ構えるポーズが鋭い。
次にヘイと数人のコールドが踊る早いテンポの若々しい"II"。
そして、脱皮して抜け殻を見つめるヌニェスの不思議なシーンがあった後、ヌニェスとボネリの成熟した美しいパ・ド・ドゥ"III"。

中心を踊るヌニェスもコールドのダンサーもみんなもみくちゃにからみあって、一つの生命体みたいな形を作り上げる場面が印象的だった。その大きくて複雑な生命体らしきものが、うごめきながら様々に形を変えていくのは感動的だった。もう一回見たい。


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観劇後、近くのBYRONでバーガーを食べつつ、3人で話をする。旦那さんもタケさんもウィ―ルドンの作品『AETERNUM』が気に入った様子。ベンジャミン・ブリテンの音楽があまり好きではない、と言っていたタケさんも、このダンスではブリテンの音楽があつらえたように合っていて魅力的に聞こえたそう。

毎回ソツなく、完成度の高い作品を出してくるウィ―ルドン。
バレエのボキャブラリーから大きく逸脱することなしにコンテンポラリーな作品を作り上げるウィ―ルドンと、バレエとは全く違う生まれのマクレガー、異なる個性の振付家を有する英国ロイヤルバレエは戦略的にバランスを保っているんだなぁと思った。
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by tsutsumi_t | 2013-03-10 09:06 | ダンス


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Tsutsumi

Mechanical engineer / Architect

建築学科を卒業、日本の建築設計事務所で働いた後、2011年に渡英。
バレエやダンス全般の観劇についてここに記しています。

(追記)2013年4月に日本に帰国しました。

(追記)2016年12月に出産しました。観劇はなかなか難しく、ブログの内容が子育てにシフトしてきています。

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