『杮葺落五月大歌舞伎 第三部』 2013年5月29日

ダンナさんが一時帰国中(ダンナはまだロンドン在住)で、日本のダンスをみにいこう!と企画したのだけど、平日は私の残業があるため、無理。週末に絞って公演を探すと、なかなかピンと来る日本のバレエ公演が無い。(日本のバレエ団って公演回数少ないのね。。)
う~ん、と考えて、「そうだ、歌舞伎にしよう!」と歌舞伎を見に行くことにした。

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オープンしたての新・歌舞伎座。
設計は隈研吾+三菱地所設計。基壇部に旧歌舞伎座と同様の劇場が配置され、背後にオフィスタワー。劇場前は人がたまる空間が広くなり、劇場内はバリアフリー化が進んだり、舞台のセリが多様になったり、様々改善されているそう。
歌舞伎座には解説を流すイヤホンガイドがもともとあるのだけど、新・歌舞伎座の新たな試みとして『字幕ガイド』(利用料1,000円)というのが始まったので、今回利用してみた。

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分厚いタブレット状のもので、スクリーンに文字が表示されるようになっている。磁石がついていて、自分の目の前の席の背中にそれをピッタリ貼ることができる。「台本チャンネル」と「解説チャンネル」があり、ボタンで簡単に切り替えることができる。
「解説チャンネル」では、舞台で起こっていることの簡単な説明や、登場人物の背景、衣裳などのコネタ、役者さんの仕草の意味などを簡潔に分かりやすく解説してくれる。画面はそれほど頻繁には切り替わらないので、スクリーンにばかり見入ってしまう危険性も無い。歌舞伎初心者の私にとっては、舞台上のことがスーッと理解できて大変便利だったのでオススメ。


『一.梶原平三誉石切』

梶原平三景時 / 中村吉右衛門
六郎太夫 / 中村歌六
大庭三郎景親 / 尾上菊五郎

歌舞伎の表現で「あっ、おもしろいな!」と思ったのは、刀をふるうときのスローモーション演技。
主人公の梶原景時が、目利きの証明のため、刀の切れ味を試す場面があるのだけど、名刀と言われる刀を振り下ろすとき、ゆっくりと大げさにスローモーションで刀を振りおろすのである。
これはなかなかにウマいお芝居。素早いよりも、スッパリ何かが切れるよりも、大きな音がするよりも、ずっとずっと刀の威力が伝わる。

お芝居の中身とはあまり関係ないけれど、時代設定で興味深いと思ったのは、鎌倉時代の武士たちの「源氏」側と「平氏」側の立ち位置。この話の舞台は、源頼朝は挙兵するもまずは敗走してしまい姿をくらましているという、平安時代末期。

主人公・梶原景時は平氏側の人間なのだが、目利きした刀の銘から、金の工面のために刀を売ろうとしている六郎太夫と梢親子が源氏に縁の人間であることに気付く。そのことをさりげなく親子に問うと、六郎太夫は、刀を買い取ってもらった恩で平氏へ鞍替えするようなことはないとして「それはそれ、これはこれ」というように、敵方の梶原景時に対し毅然とした態度を見せる。景時は「自分は平氏側の人間だが、源氏には恩顧があり、いずれはそれに報いたい」(※ちょっと私の記憶曖昧)というようなことを告げて、二人の心を解きほぐす。

史実では、梶原景時の梶原氏はもともとは源氏の家人なのだが、源氏が平治の乱で失脚後は平氏に従っており、頼朝が伊豆で挙兵したときには、景時は頼朝討伐で成果を挙げているらしい。しかしその最中で頼朝を見逃すなどしており、その後、戦を経て頼朝に降伏。彼の御家人となっている…。

そもそも史実の景時の経歴は、源氏側なんだか平氏側なんだか全く定まっていない。
ちょっと思ったのは、これは景時に限ったことではなく、当時の地方武士たちは、特にどっち側と決まっていたわけではなく、そのときそのときの状況で組する側をコロコロ変えるような存在だったんじゃのかなぁ、ということ。
時代劇を見ていると、主人に仕える忠誠心がやたらと強調される鎌倉時代だけれども、それはむしろ、そうしたものがあやうい時代だったので、かえって「忠誠心が問われる」または「忠誠心をアピールしてみせる」時代だった、というだけかもしれない。
意外に主人と御家人ってドライな関係性だったのかも?と思ったりした。


『二.京鹿子娘二人道成寺』

白拍子花子 / 坂東玉三郎
白拍子花子 / 尾上菊之助

白拍子花子(菊之助)とそのツインビーらしきもう一人の白拍子花子(玉三郎)が魅せる舞の数々。烏帽子をかぶったり、花笠を持ったり、布を持ったり、扇子を持ったり…、いろんな舞のバリエーションを楽しむ。
ほぼ同じ姿ながら、やはり菊之助の花子は初々しくて可愛らしく、玉三郎の花子は静かな妖しさもあり、それぞれに美しい。
途中、寺の所化(小坊主さん?)たちがわいわいと話を交わすコメディ場面も挟まったり、そんな場面では観客たちも大笑いしたり。

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本当は、市川海老蔵が助六を演じる六月の歌舞伎座公演を見たかったのだけど(実は海老蔵ファンなので…)、なんと発売一時間後には海老蔵が出る回のみ全て売り切れ。びっくり。そんなにすばやく売りきれてしまうとは…。
新・歌舞伎座のこけら落としであること、海老蔵のスター性、團十郎追悼の意も込められていること、人気の演目『助六』、などなど、売り切れる要因がたくさんあることは分かっていたのだけど、まさかこんな早く売り切れるとは思っていなかった。

日本の古典芸能って人気無いのかと思っていたけれど、よく考えると、歌舞伎座・新橋演舞場・国立劇場・明治座などなど、都内に歌舞伎を上演する劇場は多数あり、ほぼ連日公演を行っている公演回数の多さを考えると、歌舞伎は日本のバレエに比べたら興行的にずっとうまく回っている。(特に公演回数については、新国立劇場バレエの公演回数の少なさに驚いていたところだったのだ。)
まぁ、チケットの一般発売開始は公演のたった半月前、強気の高額料金でもチケットがほぼ捌けてしまうというのは、それだけ常連のお客様が多くて、一般客はアテにしなくても大丈夫ということなのかもしれないけど…。
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by tsutsumi_t | 2013-06-05 00:27 | 歌舞伎


バレエ、ダンス全般、建築についてのブログ。


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Tsutsumi

Mechanical engineer / Architect

建築学科を卒業、日本の建築設計事務所で働いた後、2011年に渡英。
バレエやダンス全般の観劇についてここに記しています。

(追記)2013年4月に日本に帰国しました。

(追記)2016年12月に出産しました。観劇はなかなか難しく、ブログの内容が子育てにシフトしてきています。

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