ボリショイ・バレエ『愛の伝説 THE LEGEND OF LOVE』 2015年3月21日

モスクワでのボリショイ・バレエの公演『愛の伝説 THE LEGEND OF LOVE』を品川プリンスシネマで、みどりちゃんとダンナさんと一緒に、観てきました。

前から気付いてはいたけれど…、
ロンドンで英国ロイヤルバレエに慣れてから、改めてボリショイ・バレエの作品を見たら、その特異さというか、どっちも『バレエ』だけど実際は全く異なるジャンルのものなのだなということを改めて感じました。


-----------------------

<ストーリー>

舞台はインドのある王室。
女王メフメネ=バヌーは、死の床に臥している妹の王女シリンの看病をしています。異国の謎の医師は、女王メフメネ=バヌーの美貌と引き換えにシリンの病を治すと約束します。妹のため、迷い無くその美貌を犠牲に捧げる女王メフメネ=バヌーですが、醜くなった自分の容貌を鏡に見出した途端、自分自身の醜い姿に恐れおののきます。

王女シリンは健康を取り戻し、姉と共に散歩に出た庭園で画家フェルハドに出会い、姉妹共にフェルハドへ恋をしてしまいます。
フェルハドと妹の王女シリンが愛を深めていく一方、姉の女王メフメネ=バヌーは嫉妬に苦しみ、ついにシリンとフェルハドを捕らえ、フェルハドを湧き水への道を塞ぐ鉄の山へと追いやってしまいます。

鉄の山では、フェルハドがシリンを想いながらも、水を求める民のため、男たちと共に山を切り拓く労働へと邁進していきます。
宮殿には、フェルハドに愛されることを夢見ながらも絶望に駆られて独り苦しむ女王メフメネ=バヌーの姿。妹の王女シリンは姉の女王に必死に懇願し、それを受け入れた女王は鉄の山へ向かいます。

フェルハドは現れたシリンを抱きしめますが、水を求める民衆の姿を思い、シリンへの愛を断ち切り、民のために労働に身を捧げることを決意します。

-----------------------


自分の美貌を犠牲にして妹を助ける決心をしたにもかかわらず、いざ美貌を失ってしまうと、その代償の大きさを初めて認識して苦しみ、そしてさらに恋ゆえにそのことを後悔し始めてしまう女王メフメネ=バヌー。
その姿は、常に倫理的な正しさで自らを律しながらも、欲を捨てることのできない人間の姿がよく現れていて、非常に興味深い魅力的な役柄です。

女王を演じたマリーヤ・アラシュは、美貌を捧げた瞬間、醜くなった自分に恐れおののき、のたうちまわる女王の踊りで、自己犠牲の美しい精神をもってしてもコントロールすることのできない人間臭さを見せつけ、真に迫って見応えがありました。
また、フェルハドに愛されることを夢見て踊るシーンは、眠りに落ちた女王が、夢の中で頭に王冠を戴いた逞しいフェルハドに護られるように踊る、というもので、哀れな女王の切ない心の内と共に、一国を背負う責務を果たす女王が、頼れる者も無く安らぎを得ることのできない孤独の中にいることを思わせ、強く訴えかけるものがありました。


…と面白そうなストーリー展開を期待させつつ、しかし、終盤には公共の利益のためにフェルハドとシリンの愛が引き裂かれる、という話になっていて、何だか全く別の話みたいになってしまいます。なんなんでしょう?
労働の尊さを説くあたり、明らかに当時のロシアの社会主義的な操作が感じられますね。

舞台装置は王宮の扉や王座を思わせるような抽象的な装置があるのみで、登場人物たちの心象風景を表現するときには照明を落として背景を消し、ダンサーのみにスポットライトを当てる方法で、とても秀逸でした。

振り付けでは、もちろん女王メフメネ=バヌーの踊りが見応えのあるものですが、コールド・バレエにも面白い表現がありました。
それは、コールド・バレエ全体が女王の心の有り様を表現して踊るもので、コールド・バレエの一人一人が女王としての衣装を付けて女王としての振付を踊るというシーン。
これは女王の切なさも数十倍?で迫力がありました。
グリゴローヴィチはこの表現方法が気に入っていたそうで、その後の作品にも、コールド・バレエに同様の役割を持たせることが多かったそうですね。


-----------------------

ボリショイ・バレエは徹底した踊りでの表現。
喜怒哀楽はもちろん、物語の進行のために普通ならマイムが使われるところもずっと踊り。
マイムの仕草や表情による過剰な感情表現は一切排除され、全ての物語は踊りの中に組み込まれていました。
だからこその、面白い表現方法もあったりして、グリゴローヴィチの初期の作品でありながら、とても斬新に感じるところもたくさんありました。

ただ、演劇のようなバレエだと、日常にありえそうな場面が舞台上に現れるので、物語を把握しやすいですが、この『愛の伝説』では全てを踊りから読み取らなくてはならないので、ストーリーの展開がうまく追えなかったり、少し冗長に感じる瞬間があったりもしました。
慣れの問題かもしれませんが…。


-----------------------

なかなか西側では上演されない演目だそうなので、こういう作品こそ、どんどんシネマビューイングで放映してくれると楽しいですね。
[PR]
by tsutsumi_t | 2015-04-04 22:43 | ダンス


バレエ、ダンス全般、建築についてのブログ。


by Tsutsumi

プロフィールを見る
更新通知を受け取る

カテゴリ

全体
ダンス
ダンス(日本)
演劇
オペラ
ミュージカル
歌舞伎
ストリート
読書
子育て
わたしのこと
未分類

最新の記事

山上憶良をすこしよむ
at 2017-07-26 21:56
百人一首が頭を行き交う
at 2017-07-12 20:59
0か月~2か月の頃はなんだか..
at 2017-07-04 00:01
ショパン
at 2017-04-17 20:50
お裁縫にハマる
at 2016-12-14 16:21

以前の記事

2017年 07月
2017年 04月
2016年 12月
2016年 11月
2016年 10月
2016年 07月
2016年 04月
2016年 02月
2016年 01月
2015年 05月
2015年 04月
2015年 02月
2014年 11月
2014年 09月
2014年 07月
2014年 02月
2013年 12月
2013年 10月
2013年 09月
2013年 08月
2013年 07月
2013年 06月
2013年 05月
2013年 03月
2013年 02月
2013年 01月
2012年 12月
2012年 11月
2012年 10月
2012年 09月
2012年 08月
2012年 07月
2012年 06月
2012年 05月
2012年 04月
2012年 03月
2012年 02月
2012年 01月
2011年 12月
2011年 11月
2011年 10月
2011年 09月

最新のトラックバック

プロフィール

Tsutsumi

Mechanical engineer / Architect

建築学科を卒業、日本の建築設計事務所で働いた後、2011年に渡英。
バレエやダンス全般の観劇についてここに記しています。

(追記)2013年4月に日本に帰国しました。

(追記)2016年12月に出産しました。観劇はなかなか難しく、ブログの内容が子育てにシフトしてきています。

検索

タグ

その他のジャンル

記事ランキング

ブログジャンル

子育て
日々の出来事

ブログパーツ