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Royal Opera Cinema 『Romeo and Juliet(ロミオとジュリエット)』 2012年3月22日

(2012年4月2日に少し追記)

ロイヤル・オペラ・ハウスが世界各国の映画館で公演をライブ中継するイベント"Royal Opera House Cinema"。このイベント、ときどき行われるのだが、イギリス各地の他、フランス、イタリアなどヨーロッパ各国はもちろん、アメリカや南アフリカ、ブラジルなど大陸を超えて中継されている。

この日の演目は『Romeo and Juliet(ロミオとジュリエット)』。そしてキャストはもちろん、イギリスが誇るプリンシパル、ローレン・カスバートソン。ロミオには当初ポルーニンが予定されており、映画館の予告映像もポルーニンであったが、彼が去ってしまったので、ボネリが代わったようだ。

Romeo(ロミオ): Federico Bonelli(フェデリコ・ボネリ)
Juliet(ジュリエット): Lauren Cuthbertson(ローレン・カスバートソン)

ロンドン市内でも幾つか映画館の選択肢はあったけれど、ODEON Whiteleyにする。このWhiteleyには他のcinemaよりも豪華な設備の付いているのだ。飛行機のビジネスクラスの座席のようなチェア。足をもたれかける部分と背もたれがボタン1つで調節可能な椅子。そして、呼び出しボタンを押すと係員が御用を聞きにきてくれ、シャンパンや軽食の注文を取りに来る。(利用しなかったけど。)

映画館を使うだけあり、開演前や休憩時間には、ドキュメンタリー映像が流される。
開演前には振付家の故マクミランについて、彼の生涯や振付作品、バレエとの関わりについて、マクミラン夫人や芸術監督モニカ・メイスン、指揮者、キャラクター・アーティストのクリストファー・サンダース、元ロミオで現バレエマスターのジョナサン・コープ、元ジュリエットで現バレエミストレスのレスリー・コリアがそれぞれの想いを語る映像が流された。
休憩時間には、この公演に関するTwitterのつぶやきがスクリーンに幾つも流れた。事前にタグが知らされており、そのタグを付けたツイートが集められており、世界中で中継している臨場感を味わった。(イギリスでは、ボールルームダンスの場面の曲が、"The Apprentice"というテレビ番組で使われていて有名なため、その番組での名セリフを使った、"Lord Suger, You're fired!"なんてつぶやきまで入っていたのが面白かった。)

また、今回の主役二人、カスバートソンとボネリのインタビューも流れた。


ボネリ(ロミオ):「マクミランの『ロミオとジュリエット』はマスターピースだ。ダンサーなら誰もがこのロミオを踊りたい。僕も、このロミオを踊るためにロイヤル・バレエに移籍してきたと言っても過言でない。」


というボネリのセリフが印象的。
そして、ティボルト役のベネット・ガートサイド、マキューシオ役のアレクサンダー・キャンベルもソード・ファイト・シーンについて語る。


ガートサイド(ティボルト):「剣さばきは複雑にからみあっているように見えるが、実は同じ動作の繰り返しになっている。だから頭で考える必要がない。そこにただ感情をこめていけばよいようになっている。」

キャンベル(マキューシオ):「ティボルトがマキューシオの首めがけて大きく剣を一振りするシーン。一振りする前からよけていたんじゃリアルじゃない。彼が一振りしてからよけた方が臨場感がある。ティボルト役のダンサーは本当に当たっちゃうんじゃないかと怖がるだろうけどね。」


ソード・ファイト・シーンは優雅なバレエとはまた違った魅力があるらしく、旦那はこのシーンが気に入っている。男性ダンサーやスタッフたちの意気込みも相当のようだ。
剣のしなりから、音の立て方、剣の合わせ方などこだわりどころも多く、かなり綿密に準備されている様子が分かる。ちなみに、このガートサイド、インタビュー時にはメガネをかけており、寡黙で温厚な研究者といった風情。舞台の威圧感との違いに驚いた。


さて、スクリーンで見るバレエは、顔の表情がはっきりと見て取れるのが楽しいところだ。ここまで演技していたのかと思うほど、みな顔が饒舌だった。そして細かい芝居まで手にとるように分かる。
こうした芝居は遠い観客席からは見えないものなのだが、こうした細かい膨大な量の演技が雰囲気として客席ちょっとでも伝われば成功というところなのだろうか。

カスバートソンは、以前に"Scènes de ballet"で見たことがある。イギリスに来て初めて生で見たバレエだ。彼女が現れた瞬間、あたりを払うような気品、そして、さすがプリンシパルは格が違うんだ!と思う技術の正確さだった。この作品は非常にカスバートソンに合っていたし、彼女を美しく見せていた。

しかし今回、カスバートソンのジュリエットもなかなかきれいだが、何かしっくりこなかった。
インタビューを見たり聞いたりする限り、彼女はわりと陽気で冗談好きなお茶目な女性らしい。どうにもアップになったときにそうしたイメージが先行するせいか、こうした悲劇のドラマにはまらない雰囲気なのかもしれない。
そもそもカスバートソンの個性とは何だろう?
ロホには卓越した演技力が、ラムには超人的な身体能力が、コジョカルには細かな役の作り込みと豊かな表情がある。しかし、カスバートソンがこれならナンバーワン、と言えるものが何なのか思いつかない。
イギリス生粋のバレリーナということで、プロモーションに出たり露出することの多い彼女。そのせいか話題先行と言われて過小評価されがちな気がする。できれば、"Scènes de ballet"のようなストーリーの無い作品でもう一度彼女を見たいと思う。知性ある雰囲気、音楽性豊かな動き、細くて長い手足、彼女のそういったものがとてもきれいなので、それを確認したいと思う。
by tsutsumi_t | 2012-03-30 08:06 | ダンス

『Beyond Ballets Russes』 English National Ballet 2012年3月24日

イングリッシュ・ナショナル・バレエによるバレエ・リュスへのオマージュまたは挑戦とも思える公演『Beyond Ballets Russes』のProgramme1を観た。

Firebird(火の鳥) 振付:George Williamson
L'Apres-midi d'un faune(牧神の午後) 振付:Vaslav Nijinsky(ワスラフ・ニジンスキー)
Faun(e) 振付:David Dawson
The Rite of Spring(春の祭典) 振付:Kenneth MacMillan 衣裳:Kinder Aggugini

バレエ・リュスは100年前の伝説のバレエ興行師兼プロデューサー、セルゲイ・ディアギレフにより立ちあげられた当時のバレエ団の名前であるが、それと同時に今振り返れば、この時代にバレエに起きたムーブメントと言える。
イタリア及びフランスで生まれたバレエが、起源といえる国々では、今より百年前ほどの時代には退廃化していってしまったのに対し、ロシアでは脈々とバレエが芸術として発展し新たに上質なバレエを産み続けていた。そして今度は逆に、ディアギレフと自由な体制を求めてロシアを飛び出したダンサーたちが、ヨーロッパにバレエ・リュスとして、ロシアのバレエを逆輸入していったのである。
バレエ・リュスはフランスやイギリスにおいて、相当な衝撃であったらしい。
退廃していたバレエ界が触発・奮起され、今の隆盛がある。

今回の公演タイトル、”Beyond(超える)”を頭にくっつけたあたり、かなり挑戦的な試みである。(すごく惹かれる。これはいいタイトルだ。)そして演目も、過去のバレエ・リュスのレパートリーをリステージングするのみではない。

『Firebird(火の鳥)』は過去にミハイル・フォーキンが振付しているが、今回は若い振付家が新たな解釈で全く新しい振付をしている。
『L'Apres-midi d'un faune(牧神の午後)』は、ニジンスキーによる過去の振付の復刻版と、新解釈による現代の『Faun(e)』を休憩を挟まずに連続して上演し、観客に比較させる趣向。
『The Rite of Spring(春の祭典)』はストラヴィンスキーがバレエ・リュスのために作った音楽だが、これには多くの振付家がインスパイアされて独自の振付を作っている。今回はケネス・マクミランによる振付の上演だが、既存のマクミラン版と異なる点は、新進気鋭のファッション・デザイナー、Kinder Agguginiが衣裳をモダンにデザインし直していることだ。

観客を期待させる幾つもの仕掛けが仕組まれている。さすが”Beyond”。

オープニングの『Firebird(火の鳥)』は暗闇に火の鳥の羽根がうごめくところから始まり、印象的だった。これから何が始まるんだろうと、ぐいと引きこまれた。火の鳥が人間の慾にさらされ、人間に羽根をむしりとられていき息絶えるが、純粋な乙女に導かれて再生するストーリー。火の鳥のかぼそく弱弱しく神秘的な雰囲気が美しい。しかし、伸びたつま先には生命力の強さを見せる。

ニジンスキー版の『L'Apres-midi d'un faune(牧神の午後)』は、どういう作品なのか文字や写真では知っていたものの、ダンスそのものは見たことがなかった。センセーショナルな内容や革新的といわれる批評を既に知っていたので、かなり期待していた。
そして、噂通り、革新的であった。
正直、これがダンスなのか何なのか分からない。
神話の場面を絵画に切り取ってつなぎ合わせていくような振付。徹底的に滑らかさを排除し、いびつに曲げられた腕、ぎこちなく動くダンサーたち。そして、ニンフたちに恐れられ、彼女たちに拒否される牧神の悲哀。異常すぎるシュールさ。
こうした手法が後世には伝わっていない。現代、こういう振付を脈々と伝えている振付家はいない。ニジンスキーが突然変異とも思えるし、バレエ界のガウディとも言えそうな、異端さ。
あまりに謎で、未だにとまどいが消えない。

そして、それに引き続き上演された『Faun(e)』。舞台上には舞台装置は何も置かず、舞台裏まで見せていた。ピアノが2台、ピアニストも2人。男性ダンサーが2人。各ピアノはそれぞれのダンサーに同期していると考えていいだろう。同性愛をモチーフにしていると思われる美しいダンスだった。けれども、全く元ネタであるところのニジンスキー版を”Beyond”してはいなかった。あぁ、よくあるダンスだなぁと思ってしまう。ニジンスキー版が異色すぎるのだ。

『The Rite of Spring』は衣裳を黒くし、モダンな形状に変えている。マクミラン夫人のイチオシのデザイナーということだ。インタビューで「バットマンっぽい」とデザイナー自身言及していたけれど、そのまま確かにバットマンぽかった。振付自体は古代の生贄を思わせるが、衣裳がモダンで無機質なイメージのものになったお陰で舞台設定も現代になったかのようだった。衣裳は手が混んでいるようだったが、遠目には黒としか分からず、地味だった。好意的なガーディアン紙の批評でも、衣裳については昔のがよかったかも・・・と言われている。


"Beyond"していてもいなくても、これは挑戦的で面白い試みである。イングリッシュ・ナショナル・バレエの芸術監督が解任されるとのうわさがあるが、こんな企画が実現できる人が去ってしまうのは残念。
by tsutsumi_t | 2012-03-28 08:43 | ダンス

『FAR』 Wayne McGregor | Random Dance 2012年3月19日

Sadler's Wells劇場にて、Wayne McGregor | Random Danceによる『FAR』を見る。

舞台背景に、ドット状に規則的に配置されているLED光を放つ長方形の大きなボードが掲げられており、その前で男性ダンサー5人と女性ダンサー5人がダンスを繰り広げる。

LEDの光は、全てが点灯したり、どこか1つだけが点灯したり、線上に明滅したり、波を描いたり、様々に変容する。そして、このLED光に予告するとおりに、またはLED光に操作されたかのように、ダンサーたちが現れ、衝突し、散らばる。


これまでウェイン・マクレガーの作品を見て、全く感情表現が無く、身体能力の限界を求めているようだと思っていたのだけど、今日はそうは思わなかった。ダンサーたちは常に別のダンサーと一触即発の状態にあり、お互いの反応を確かめ合っているように見えるのだが、それはまるで、目の前にいる相手への「興味」「好奇心」といった、赤ちゃんが示すようなとても原始的な感情を見せているようだった。

マクレガーのインタビューによると、彼が振付を通して探求しているものは「BODY(身体)」と「MIND(心)」の関係性を素直に動きに生かすことのようだ。

人間関係の波にもまれてしまった我々は、既に心と身体は乖離してしまって、心とは正反対のことでも平然と行動することができるし、心とは正反対の表情をしてみせることもできる。
または、無意識に淡々とルーティーンワークをこなすこともでき、そのことをもはや苦とも思わず、むしろ気楽だと感じてしまうことすらある。
「BODY(身体)」と「MIND(心)」の乖離とは、例えば、毎朝同じ道を必ず歩いていることや、電車の中で人に至近距離で接していてもそしらぬふりをすること、といった無意識の行動のことなのかなと思う。

だから、その乖離を否定し、「BODY(身体)」と「MIND(心)」の統合を目指すマクレガーのダンスが、「興味」や「好奇心」といった、初現的な気持ちを思い起こさせるのは、我々が学習してしまった心の抑制方法を丁寧に排除し、自分以外の存在に対して必然的に起こる感情を露わにしたためではないかと思った。
by tsutsumi_t | 2012-03-26 08:16 | ダンス

英国ロイヤルバレエ『ROMEO AND JULIET』 2012年3月7日

アリーナ・コジョカルとヨハン・コボーが主演する『ロミオとジュリエット』。この演目はサラ・ラム&フェデリコ・ボネリの回に一度見たのだけど、どうしてもコジョカルの回を見たかったので、当日、仕事が終わった後、ボックス・オフィスで当日券を買った。

ボックス・オフィスでまだ買える券があるかどうか聞くと、立ち見席が一枚だけ残っている、とのこと。壁にズラリと並ぶ、リターン・チケット(買った人がキャンセルして戻ってきたチケット)を待つ人々の行列が見えたので、ついでにおじさんにリターン・チケットがどのくらいあって、どんな席が空いてるのか聞くと、「私も知りません。」と。
「え?じゃあ、並んでる人たちは買えるかどうか分からないけど並んでるの?」
「そうですよ。あの中の何人かは見れずに帰らないといけないかもね。」
絶対に見れる立ち見席と、もしかしたら見れないかもしれないけど良い席があるかもしれないリターン・チケットを天秤にかけ、立ち見席10ポンドを選ぶ。


JULIET/ジュリエット: Alina Cojocaru/アリーナ・コジョカル
ROMEO/ロミオ: Johan Kobborg/ヨハン・コボー
MERCUTIO/マキューシオ: Ricardo Cervera
TYBALT/ティボルト: Bennet Gartside
BEVOLIO/ベンヴォーリオ: Kenta Kura/蔵健太


コボーがロイヤル・オペラ・ハウスで踊る機会は相当少ない。
彼の公式ウェブサイトのカレンダーを見ると、日本でのコジョカルの座長公演において彼の作品が幾つか踊られていたり、今シーズンのロイヤルバレエの演目『ラ・シルフィード』がコボーによる改訂版だったり、ロイヤル・ニュージーランド・バレエの11月の演目『ジゼル』を、ステーフェルと共に改訂していたり、と、コボーの活動はだいぶ振付や舞台演出に移行してきているように思える。

コジョカルとコボーがプライベートでもパートナーということを知っているせいなのか、見ていて気分的に入り込める。そして、なぜかこのキャストでこの演目を見ないと、どうしても感動が薄れてしまうのではないかと、怖れている。それは同時に、もし、年長のコボーが引退したら、コジョカルは別のパートナーと組んで同じ感動を届けられるのか、という疑問でもある。


さて、今回の舞台、その年長のコボーだが不思議と若く見えた。彼のロミオは軽薄な青年といった趣きだった。コボーが踊る役はいつも軽薄そうだったり、キザに見える。ちなみに、この軽薄さというのは二枚目に通じていると思う。

コボーを見ていると、彼は常に舞台上で観客の視線を集めている。彼は自分が中心で踊っていることを知っているし、むしろ、舞台の中心として踊ることしかできないんじゃないだろうか。プリンシパルとして長年活動していれば、クラシックで主役以外の役を踊ることはほとんど無いだろう。意識しなくても、コボーはきっと華やかさをまきちらしながら踊っているだろう。
逆に、ずっとプリンシパルになれなければ。プリンシパルの位についているダンサーの多くは、短期間で階級を駆け上るか、既にプリンシパルとして移籍してきた人が多い。逆に、脇役を踊っている人々は、クラシックではほぼ脇役しか踊っていないのだ。脇役として控えめな光を出すことに、いつしか慣れてしまうのではないだろうか。
そう、クラシックは、中心としての主役と周辺としての脇役があまりにくっきりと分かれている。

しかし、コンテンポラリー・ダンス。例えば、ロイヤルでもよく踊られるウェイン・マクレガーの振付作品では、中心といえるべき存在はいない。常に舞台上にダンサーが散らばり、あちこちで1対1で向き合っている。プリンシパル、という中心を踊ることに慣れた人たちが、こうした中心を規定しないダンスにうまく対応できているんだろうか?


話が飛んでしまったのは、立ち見席はやはり10ポンドの価値だったということで、舞台の床が半分見えないので、舞台上で起こっていることも半分は見えなかったのである。とほほ。

終演後、拍手が飛び交う中、コジョカルとコボーが何度もキスしているので、客席からも「ヒュ~」という声が上がる。それに照れて、コジョカルはコボーを手を引っ張って、幕にササッと入って行ったのが、なんともかわいかった。いつまでもコジョカルはジュリエットそのままに見えるようだ。
by tsutsumi_t | 2012-03-15 07:53 | ダンス

Anna Pavlova : RUSSIAN BALLET ICONS GALA 2012年3月4日

アンナ・パブロワのイギリス移住100周年を記念して、パブロワのトリビュート・ガラ公演がロンドンColiseumで開催された。『RUSSIAN BALLET ICONS: Anna Pavlova』。

1. Le Corsaire (海賊): Anastasia Stashkevich, Viacheslav Lopatin
2. Compassione: Giuseppe Picone
3. Giselle(ジゼル): Alina Samova, David Makhateli
4. Russkaya(ルスカヤ): Ulyana Lopatkina(ウリヤーナ・ロパートキナ)
5. Romeo And Juliet(ロミオとジュリエット): Iana Salenko, Marian Walter
6. Life is a Dream: Tamara Rojo(タマラ・ロホ)
7. La Dame aux Camelias(椿姫): Alina Cojocaru(アリーナ・コジョカル), Alexandre Piabko
8. Cor Perdut: Svetlana Zakharova(スヴェトラーナ・ザハロワ), Andrey Mekuriev
9. Splendid isolation 3: Irina Dvorovenko, Maxim Beloserkovsky
10. Raymonda Pas de Deux(ライモンダ): Tamara Rojo(タマラ・ロホ), Sergei Polunin(セルゲイ・ポルーニン)
11. Manon(マノン): Daria Klimentova(ダリア・クリメントヴァ), Vadim Muntagirov(ワディム・ムンタギロフ)
12. La Bayadere(バヤデール): Evgenia Obraztsova
13. White Swan Pas de Deux(白鳥の湖): Myriam Ould-Braham, Alessio Carbone
14. La Prisonniere: Lucia Lacarra(ルシア・ラカッラ), Marlon Dino
15. Pavlova & Cecchetti: Ulyana Lopatkina(ウリヤーナ・ロパートキナ), Marat Shemiunov


アンナ・パブロワのトリビュート、ということだったが、演目はそれほど彼女に特化しているわけではなかった。彼女が踊ったであろう演目の際には、彼女の写真が背景に映し出されていたが、他に新作もあれば、特にパブロワだからこれ、というわけでもない演目も多い。主にロシアや東欧出身の世界で活躍しているダンサーたちを集めたガラ公演である。

前半ではウリヤーナ・ロパートキナの”ルスカヤ”が飛びぬけてすばらしかった。客席はそれまでの舞台とは打って変わってしんと静まりかえり、舞台上のロパートキナへ全ての視線が集中する。脚のラインを露わにしない衣装で動きも控えめであるにもかかわらず、その手足や物腰の柔らかさと視線の鋭さは観客を捉えて離さず、まるで静かに燃える炎が舞台をゆらゆらと動きながら、観客を妖しく誘惑するかのようだった。

後半では、タマラ・ロホとセルゲイ・ポルーニンの”ライモンダ”からのパ・ド・ドゥが最高の盛り上がりを見せた。次々と繰り出される技の競演に拍手が次から次へと起こる。ポルーニンが健在で良かった!と安心した人も多かったのではないだろうか。複雑なグラン・ジュッテを正確に繰り返す彼に、観客は声援とも思える温かな拍手を送った。ロホはソロをタンバリンを持たずに、手を打ち合わせるスタイルで踊った。このゆっくりとしたソロはエキゾティックで、ロホにぴったりだった。

ポルーニンがロイヤルバレエを退団以降、彼に関する批判の中では、パートナーリングに問題があったことが多く指摘されている。バレリーナをサポートする技術がなってない、ということらしい。今回、年輩で経験豊富なロホと踊ったせいか、そうしたことは特に感じなかった。しかし、グラン・パ・ド・ドゥの最後、アンデオールで回るロホを、通常のサポートであれば、男性ダンサーは腰にそっと手を当てて軸がぶれないようにしているべきなのだが、明らかにポルーニンは意図的に、その手をふわりと大きく、腰から離してみせた。「あぁっ」と思い、ロホは一瞬少し傾いたようにも思えたが、そのまま問題なくフィニッシュのポーズを取って終わった。あれはなんだったんだろうか。ロホが安定して回転していることを見せたかったのか?とにかく一瞬のことだけれど、異常に思えた。舞台は何事もなく終わったけれども。
先にも述べた通り、ロホとポルーニンには今回のガラ公演で最大ともいえる拍手・歓声が起こった。

他には、ルシア・ラカッラの奔放で小悪魔的な雰囲気が新鮮だった。小さな身体にバネが入っているかのように生き生きと踊るダンサーだった。
アリーナ・コジョカルの"椿姫"は、期待していたのに、分かりにくくて残念だった。ドラマティックな場面であるのは分かるのだけど・・・、リフトが多く、動きも全体的に早く、コジョカルによる役の細かな作り込みを楽しむようなものではなかった。初めて見る物語のバレエを抜粋で見ると良くない、のかも。


今回、残念だったのは、パブロワに注目した公演でありながら、その演出に大した工夫が無かったこと。パブロワの名前を冠するのであれば、それぞれの演目の前に彼女の映像を流してから、現代のダンサーが踊ってみせる(そんなのはダンサーに重荷すぎる?)とか、各ダンサーにパブロワへの思いを語らせるとか、少なくとも演目はすべてを彼女のレパートリーから選ぶとか、してほしいのに・・・。
また、"ロミオとジュリエット""マノン"といった、演劇性の強い演目は、ガラ公演で観るには感情移入もできないので、面白味が半減してしまうし、"ジゼル"も同様にガラ公演で観て、ダンサーの良さが分かるような演目ではなかった。
この公演全体の組み立てが、「定番の演目、話題の演目を集めました」というのが分かってしまうし、「スターを呼ぶには仕方なかったんです」というのも分かってしまって、残念だった。
by tsutsumi_t | 2012-03-09 08:05 | ダンス


バレエ、ダンス全般、建築についてのブログ。


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プロフィール

Tsutsumi

Mechanical engineer / Architect

建築学科を卒業、日本の建築設計事務所で働いた後、2011年に渡英。
バレエやダンス全般の観劇についてここに記しています。

(追記)2013年4月に日本に帰国しました。

(追記)2016年12月に出産しました。観劇はなかなか難しく、ブログの内容が子育てにシフトしてきています。

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